HOUSING MARKET INSIGHTS / VOL.03

多摩エリア/住宅購入者の意識

住宅購入者が求めるものは
変わったのか?

データから考える、多摩エリアの住まい選びと安全性。

住宅を購入する際、人々は何を重視するのだろうか。価格、立地、間取り、交通利便性。これらは、以前から住宅選びの重要な判断材料とされてきた。

一方、近年は台風や集中豪雨、地震などの自然災害を背景に、住宅そのものの性能だけでなく、住む地域の安全性にも関心が高まっているように感じられる。

では、実際の住宅購入者の意識は変化しているのだろうか。国土交通省の調査データをもとに、その傾向を考えてみたい。

玉川上水の水路と両岸の緑(LTS撮影)
玉川上水沿いの風景撮影:LTS

国土交通省の「住宅市場動向調査」では、実際に住宅を取得した世帯に対し、住宅を選んだ理由などを尋ねている。

新築分譲戸建住宅取得世帯の回答を見ると、住宅の設備・性能について「火災・地震・水害などに対する安全性の高さ」を選択理由に挙げた割合は、2021年度27.3%、2023年度23.0%、2025年度26.2%だった。

一方、住宅そのものの選択理由として「災害発生リスクの低い地域だったから」を挙げた割合は、2022年度9.8%、2023年度17.1%、2024年度9.0%、2025年度10.6%と変動している。

自然災害への関心が高まっているという印象とは異なり、調査結果は一貫した増加傾向を示していない。

もちろん、この数字だけで住宅購入者の安全意識が低いと判断することもできない。

住宅を選ぶ際には、価格や通勤、家族構成など、さまざまな条件を考慮する。災害リスクを確認していても、それが最終的な購入理由として回答されるとは限らないためだ。

「気にしていること」と「購入の決め手になったこと」は、必ずしも同じではない。

住宅の安全性には、大きく二つの視点がある。

一つは、建物そのものの安全性だ。耐震性能や構造、火災への備えなど、住宅の仕様や性能によって説明できる部分である。

もう一つは、住宅が建つ地域の安全性だ。河川の氾濫、内水による浸水、土砂災害、避難環境などは、建物の性能とは別に確認する必要がある。

多摩エリア26市でも、各自治体がハザードマップなどの防災情報を公開している。

例えば、立川市では河川の氾濫による外水と、排水能力を超える雨による内水の情報を区分して案内している。稲城市では、洪水や土砂災害に加え、震度分布や液状化に関する情報も公開している。

これらは自治体が提供する情報の一例であり、市ごとの安全性を比較するものではない。

また、同じ市内でも、物件の所在地によって災害リスクは異なる。ハザードマップの想定区域外であっても、災害の可能性がなくなるわけではない。

重要なのは、地域を一律に「安全」「危険」と判断することではなく、検討している物件について、どのようなリスクが想定されているかを知ることだろう。

住宅販売では、価格、間取り、設備、交通利便性などが、物件の魅力を伝える中心となる。

一方、購入者が判断するためには、建物の性能に加え、地域の災害リスクに関する情報も参考になる。

水害ハザードマップにおける物件所在地については、宅地建物取引業法に基づく重要事項説明の対象となっている。

しかし、契約に向けた説明と、購入を検討し始めた段階での情報提供は、必ずしも同じではない。

もちろん、販売図面にすべての防災情報を盛り込むことが適切とは限らない。限られた紙面では、物件の特徴をわかりやすく伝えることも大切だからだ。

それでも、自治体の公式ハザードマップへの案内や、周辺の避難環境を確認するための情報など、購入者自身が調べられる仕組みは考えられる。

住宅の魅力を伝えることと、購入者が正確に判断できる情報を提供すること。この二つは、必ずしも相反するものではない。

今回のデータからは、住宅購入者の安全意識が一貫して高まっているとは結論づけられなかった。

しかし、建物の性能と地域の安全性を分けて考えることで、住宅選びに必要な情報が見えてくる。

住宅の価値は、建物そのものだけで決まるわけではない。その場所でどのような暮らしを送れるのか。どのようなリスクを理解して選ぶのか。

多摩エリアの住まい選びを考えるうえで、改めて大切にしたい視点ではないだろうか。

  • 国土交通省「住宅市場動向調査報告書」各年度(分譲戸建住宅取得世帯)
  • 国土交通省・国土地理院「ハザードマップポータルサイト」
  • 立川市・稲城市の公式防災情報

調査結果は多摩26市の購入者のみを対象としたものではありません。

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